雇用

テレワーク導入による通勤手当の減額支給

Aさんの通勤手当の問題

Aさんの会社では、ようやく先月からテレワークが導入され、週に2回出社し、残りの日は在宅でのテレワークとなりました。
先日、給与の支給日にオンラインで給与明細を確認したところ、いつもより支給総額が少なく記載されていました。よく見ると、通勤手当がいつもの半分位になっていました。
念のため、給与振込に指定している銀行口座を確認すると、やはり、給与明細に記載されていた金額しか入金されていませんでした。
Aさんは、何かの処理ミスであろうと考え会社に問い合わせたところ、「テレワークになったので通勤手当は週2回分となっています」との回答がありました。

Aさんは、会社に対し、これまでの通勤手当の金額との差額の支給を求めることは出来るのでしょうか。

通勤手当の法律上の位置付け

まず、通勤手当の法律上の位置付けをみてみます。
一般的には、上限が定められていても、通勤経路の交通費実費を原則として支給していることが多いのですが、労働基準法上、会社には通勤手当の支給義務はありません。
しかし、入社時の会社と従業員の間の労働契約あるいは就業規則・通勤手当支給規程等で通勤手当の支給に関し定められている場合が多く、その場合、会社には通勤手当の支給義務があることとなります。
そのように通勤手当について定められている場合、会社の通勤手当の支給義務の根拠が労働契約あるいは就業規則、通勤手当支給規程等ということになりますので、会社が支払義務を負う支給額に関しては、労働契約あるいは就業規則、通勤手当支給規程等の規定の仕方により異なるものとなります。
一般的には、交通費に関しては、①月額定額の支給を定めているケースと、②会社が経済的・合理的と考える経路を基に算出した金額(公共交通機関の場合は定期代、自家用車通勤の場合は距離に一定金額を掛けた金額)としていることが多いものと思われます。

テレワーク導入後の通勤手当

これらのことをもとに、これまでの毎日の通勤が求められた期間の通勤手当とテレワーク導入により、実際の通勤日が減少した後の通勤手当について考えてみます。
上記の①のように月額定額の支給を労働契約書あるいは就業規則等で定めているような場合、実際の通勤日が減少していても、会社が一方的に通勤手当の支給額を減らすことは出来ないこととなります。
一方、「通勤手当は、月額○○円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。」あるいは、「通勤手当の月額は、運賃、時間、距離などを勘案して経済的かつ合理的と認められる通常の通勤経路及び方法により算出する」といった内容の規定となっているような場合、実際に通勤回数が減少したのであれば、前者でいえば「通勤に要する実費に相当する額」、後者でいえば「経済的かつ合理的と認められる通常の通勤経路及び方法により算出」した金額も減少することとなり、会社が従業員に対し支払い義務を負う金額も減少してくるものと考えられます。
ただし、通勤手当として6カ月の定期代を参考にして算出した金額を支給しているような場合、会社は払戻金額を確認した上で従業員に不利益が発生しない範囲で支給通勤手当の減額幅を定める必要があると一般的には考えられています。
このような、通勤手当の減額の問題は、以前より、長期出張者、長期休業者等の場合に問題とされてきました。
長期出張者あるいは長期休業者の場合も、原則としては、テレワーク導入時と同様に考えられます。

それでAさんの場合は?

以上のことから、Aさんの場合は、まずは、労働契約書あるいは就業規則・給与規程・通勤手当規程等から通勤手当の支給額の算出方法を確認し、上記の①のような一定金額での支給と定められていたような場合は、会社に対し差額の支給を求めることも可能な場合がありますが、②のように実費あるいは合理的金額と定められていたような場合は、残念ながら会社に対して差額の支給を求めることは特段の事情がなければ困難ということになります。

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