登山事故

山岳地帯の増水事故における教員の刑事責任

青井岳キャンプ場事件の概要

以前の記事でも触れましたが、山岳地帯での教育活動中の事故において引率教員が起訴され、無罪判決が下された事件としては、把握している範囲では、すでにみました27)朝日連峰遭難事件と31)青井岳キャンプ場事件があります。
今回は、登山事故ではありませんが、登山事故における教員の刑事責任を考える上での参考として、山岳地帯での事故である31)青井岳キャンプ場事件をみてみます。

この事件は、中学の生徒会活動として、青井岳キャンプ場で実施されたキャンプにおいて、同キャンプ場を流れる川の中州にテントを設営したところ、川が増水氾濫する中、中州から脱出しようとした生徒らが濁流に流され、参加していた生徒11名のうち8名および引率教員2名のうち1名(以下死亡した教員を「A」、事故後も生存していた教員を「甲」といいます。)が死亡した事故において、甲が業務上過失致死罪により起訴されたもので、甲には無罪判決が下されています(宮崎地判昭和43年4月30日)。
尚、このキャンプ活動は、学校教育における特別教育活動と位置付けられています。

青井岳キャンプ場事件判決

事件の発生経緯

この31)青井岳キャンプ場事件の経緯について、裁判所は次のように認定しています。

・・・甲は昭和四一年八月一二日正午過青島中学校生徒・・・外一〇名を引率して・・・青井岳キャンプ場へ向うべく出発し、同日午後三時頃国鉄青井岳駅に到着したが、当時は降雨であつたため等もあり当夜のキャンプをあきらめ・・・中学校・・・分校に生徒らと共に宿泊し・・・翌一三日午前九時頃同分校から右キャンプ場へ赴いたが、同キャンプ場では折からの雨のためキャンプ場が汚れていた等の事情のため同所を流れる境川の中州にテントを張りキャンプを設営することとした。同日午後同僚教諭Aが応援のため来て一行に加わつた。
・・・翌一四日午前六時三〇分頃甲が目をさました時にはトランジスターラジオが台風一三号の接近を告げ、境川の水流は著しく増えており直ちに生徒らを同所より避難させるべく荷物をまとめ、甲のみどうにか対岸に渡りつき生徒らの脱出方法、場所等を考えていたが、急激な増水のため生徒らの脱出方途もなくなり、甲は警察官派出所へ救いを求むべく現場を一時立去つた。その間生徒らの孤立した中州は増水のためわずかの未水没地を残して激流に洗われたが同日午前九時三〇分頃、右同僚教諭のAは生徒らを水中に飛び込ませ対岸にたどりつく以外に方法はないと考えキャンプ用テントを浮袋代りにしてこれに生徒ら全員を川に入らせた結果濁流に押し流されてA及び起訴状記載の生徒八名は溺死するに至つた。

宮崎地判昭和43年4月30日

検察官の主張した注意義務

この事件では、検察官は、甲に課されていた注意義務として、①事前に実施踏査を行う義務、②気象状況を確実に把握する義務、③安全な場所をキャンプ設営地として選定する義務、④天候の変化等に応じてキャンプを中止、変更するなどの措置をとる義務を挙げ、

・・・甲は右注意義務の全てを怠り、悪天候をおして漫然・・・キャンプ場付近の境川中央に位する・・・中州にキャンプを設営させ、同日午後一〇時頃から降雨のため境川が漸次増水しつつあることを知りながら、何らの措置も講ずることなくキャンプを続けた

宮崎地判昭和43年4月30日

行為を注意義務違反行為であると主張していました。

因果関係の中断の問題

本件の問題点

ところが、上記の経緯のように、実際に生徒らが川を渡渉しようとして濁流に流され、生徒8名の死の結果が生じた際には、甲はテントが張られた中州から離れており、また、生徒らを渡渉させたのはAであったことから、上記の検察官が主張する注意義務違反行為と生徒の死の結果との間の因果関係も問題となりました。これは、川の中州に幕営し、川が増水する過程で避難しなかった(避難が遅れた)など、甲が主導した行為の後に、Aが生徒らを中州から増水した川を渡渉して避難するよう導いている最中に生徒が死亡してることから、このAの行為により、上記のAの注意義務違反行為と生徒の死の結果との間の因果関係が中断したのではないかが問題となったことによります。

弁護人の主張

弁護人は、この点について、

・・・本件は被告人が現場にいない不知の間に甲と共に引率のため来ていたAが独自の判断で早まつて中州からの脱出を図りキャンプ用テントを浮袋代りとしてこれにつかまらせて生徒全員を濁流中に入らせた結果であり、当時中州は未だ全員留るに足るだけの水没しない部分はありそのまま留つておれば生徒の入水直後より増水はおさまり押し流される結果の発生はあり得ず、Aの行為の介入前の被告人の行為につき注意義務違背の有無を検討するまでもなく、甲の行為は本件結果との間に因果関係を欠き罪とならない

宮崎地判昭和43年4月30日

と主張しました。しかし、裁判所は、この点について、

裁判所の判断

・・・甲が中州から南岸にたどりつき生徒らの中州からの脱出方法を考えて同所に居た時点には既に相当量の増水のため生徒らを脱出せしめる方途はなく中州に孤立させた状態で・・・当時は約二、六〇〇平方メートルもあつた中州が僅か畳一、二枚の広さを残して水没し、それが激流のため刻々と崩壊し荷物は次々と流され、足元を流砂が洗い増水のためその巾五、六〇メートルにも達した激流は、激しい雨音と相まつて対岸の者の声も全くかき消される程の水音を立て、依然増水しつつあるものと考えられ・・・約二時間三〇分も中州に孤立したまま救助されるあてもなく放置され・・・寒さと不安のため顔色もなく震えていた生徒らを中州から脱出させる以外にないと考えてAが生徒を泳いで対岸にたどりつかせるべく生徒らを水に入らせ、生徒らが全員これに従つたことは当時の右各事情及び中州に居る者の不安感等の心理状態からは極めて自然の成りゆきであつたと認めないわけにはいかない。「まつておれ」とか「早まるな」と対岸から一部の者が身振りで示したとしても「あのままいても助からないと思つた」「泳ぐより方法がないと思つた」という目撃者の当時の判断・・・からも認められる様に、右の如き状況の中州に孤立した者が脱出を図ること、それにより溺死等の結果の発生し得ることはわれわれ通常人の経験則上一般に予期し得ることと言わねばならない。従つて、Aが生徒を入水させる処置を採つた直前の状態に至つたこと、すなわち生徒らを中州に孤立させ脱出、救出を長く不能の状態に陥らせたことにつき甲に過失ありとすれば右甲の注意義務違背はAの行為の介入があつたとしても、本件結果との間に相当因果関係は否定し得ない

宮崎地判昭和43年4月30日

として、事故当時の状況下において、中州に取り残された生徒らが脱出を図り、その際に溺死することは、「通常人の経験則上一般に予期し得る」ものであるとして、甲の注意義務違反と生徒の死亡結果との間の因果関係を認めています。

教員の注意義務に関する裁判所の判断

その上で、検察官の主張する上記4つの注意義務に関し、次のように、個別に検討を加えています。

事前に実施踏査を行う義務

まず、①事前に実施踏査を行う義務に関しては、

・・・青井岳キャンプ場は・・・シーズン中は、管理人も常駐し・・・毎シーズン一万数千人の利用する著名な公営キャンプ場であるうえ・・・既に同キャンプにおいて、キャンプの経験を有している者が参加生徒中三名おり、このことは、甲も知つていたこと、更に甲は国鉄日豊線の列車内から度々望見したこともある・・・ばかりでなく、甲は・・・担当者たるB教諭に代役を頼まれ生徒の引率を承諾した八月一一日B教諭を通じ、山之口町役場へキャンプ場利用、テント予約の申込みをなし、当キャンプを実施した前日の八月一二日には・・・一旦生徒らを・・・中学・・・分校に留まらせてキャンプ場へ自ら行つてテントを予約すると共にその状況を現実に観察しているのであつて・・・甲は、当キャンプを現実に実施する前に既にキャンプ場及び周辺の地形、環境については把握していたものと考えられる・・・気象についても、八月一一日以前は快晴続きであり事前実施踏査は参考となり得ず意味がなかつたものと考えられ仮に、それ以前に当地に足を運んでも右甲が把握していた以上の状況を認識することは無かつたものと考えられる。
事前の実施踏査が要求される理由は、危険発生に関する未知ないし不確定的要素を確実に把握することにあると解されるが、事前踏査によつて認識されるそのような要素は本件の如きキャンプ場についてはほとんど考えられず、事前踏査の義務があるか否かについて疑問であるばかりでなく、前述の諸事情を併せ考えると・・・甲についてその義務違背ありとは言えない

宮崎地判昭和43年4月30日

として、これを否定しています。

気象状況を確実に把握する義務

次に、②気象状況を確実に把握する義務について、

・・・甲はキャンプ地へ出発する日である八月一二日の朝ラジオで「曇ときどき雨」との予報を聞き、九時頃学校に出て新聞の天気図により南方に熱帯低気圧の発生を知り気がかりとなつたが、天気予報などからキャンプができない様なひどい天気にはなるまいと判断した。そこでトランジスターラジオを携帯して、キャンプのため生徒と共に出発したが同日午後七時頃には「雨のち曇」と天気は快方に向う様な予報を聞き、翌一三日の午前七時頃には「山間部では曇ときどき雨」と少し天気の悪くなる様な天気予報を聞き、当日の夜間は特に天気予報は聞いていないが降雨状況等を現認して出水のおそれはないと判断し、更に翌一四日朝六時三〇分頃熱帯性低気圧が台風に発達して沖繩付近にあり、山間部では今後五〇ないし一〇〇ミリの降雨を見るとの大雨注意報を聞いている旨述べており、ほぼこれに沿う天気予報等がなされている・・・夏期等に、熱帯性低気圧が南方洋上に発生し後日これが台風に発達し九州地方に接近し風雨をもたらすこともあるが、これが発生した場合もその後の進路、発達状況、その他の気象条件等により何らの影響をも与えない場合も多い・・・一二日に熱帯性低気圧が発生しており甲は、これを知てついたとしても、キャンプ引率が決まつてから一日に一、二回の割でラジオの天気予報を聞くなどをなし、それによつて、前述の如く気象状況を把握しており・・・甲の気象状況の把握が甘きに失していたとは認められず・・・

宮崎地判昭和43年4月30日

として、これも否定しています。

安全な場所をキャンプ設営地として選定する義務

続いて、③安全な場所をキャンプ設営地として選定する義務について、

・・・管理者たる山之口町土木課長・・・同町町長・・・によれば・・・中州は当キャンプ場の範囲に含まれるとは考えていなく・・・中州にテントを張るというのは予想外である旨述べ・・・同キャンプ場の常駐管理人・・・も今までも中州にテントを張つたのを見かけたこともないし、甲が中州に張ろうとした際増水の危険があるからこれを止める様注意した旨証言している・・・が青井岳キャンプ場ないし、青井岳キャンプ村と呼称されるものが右範囲に限定されると一般に考えられていたか否かは・・・極めて疑問で・・・本件キャンプ場の雑木林、杉林のみならず、中州南の対岸の河原にもキャンプが現に行われていたことが認められ・・・管理人が甲に対し中州は危険だからキャンプを止める様注意したとする・・・証言は信用できない・・・右中州は、当時高さ水面上約1.5メートルないし2メートル、面積約二、六〇〇平方メートル余もあり・・・境川の水流は足のくるぶしまでの程度(水深一〇センチないし二〇センチ)しかなく・・・中州が南側の護岸及び対岸から各約一〇メートル離れた場所であるとは言え同所がキャンプ設営地として危険であると判断しなかつたことが必ずしも理由がないものとは言えないうえ・・・当時雑木林内のキャンプ場所が残飯等の汚物が散乱し、これにハエが群がる程汚れており汚物と便所の異臭が一帯に満ち、付近は雨のため濡れそぼつており・・・当時降雨は間断的に降つていたとはいえ、小雨の程度で境川の水流を見ても増水の徴候は全く認められなかつたことでもあり・・・以上の各事情を綜合するとき甲が中州をキャンプ場所と選定したことに過失ありと断定することはできない

宮崎地判昭和43年4月30日

として、これも否定しています。

天候の変化等に応じてキャンプを中止、変更するなどの措置をとる義務

そして、④天候の変化等に応じてキャンプを中止、変更するなどの措置をとる義務についても次のように否定しています。

・・・一二日に・・・中学・・・分校に生徒らを留まらせ、甲が一旦同所から約1.5キロメートル離れたキャンプ場に赴きキャンプ場の状況、降雨状態から見て、当夜は、同分校の教室内で宿泊させ、翌一三日は、九時過頃出発したが出発後にわか雨に降られたが、降つたり止んだりで大した雨でははく、キャンプ場を流れる境川も全く増水の徴候はなく前記の事情下に中州にテントを張つたことが認められ・・・その後も相変らず小雨が断続的に降る程度であり境川の水位は何ら変つていない・・・一三日の午後一一時頃生徒らのキャンプを見回つた時川の水面を懐中電燈で照らして見たが川水の量に異常はなかつたことを認めているし、翌一四日・・・Cと女生徒らは、五時頃からトランプをテント内で行つているが増水や異常な雨の気配は感じていない。従つて、この間に増水に対処してキャンプ設営を中止、変更する必要のある程の事態の変化は本件証拠上認めることができない・・・が、・・・一四日午前六時三〇分頃甲が目を覚した際ラジオで熱帯性低気圧が台風に発達し、沖繩付近にあり、今後山間部では、五〇ないし一〇〇ミリの降雨があるという大雨注意報を聞き、直ちに、テントから出て川面を見た時には相当の増水をしており、生徒らが対岸へ渡れないおそれもあつたので、直ちにAと共に生徒らを起し荷物などをまとめさせ、中州からの脱出のために中州から対岸のキャンプの協力でロープをつたつて南側の対岸に甲が泳ぎつき、同所から生徒らの脱出するための場所を探しているうちに全く急激に増水し、中州からの脱出及び救出は不可能となつた・・・この間に甲は、荷物等の片付け、ロープを張つて対岸にたどりつくこと、対岸から脱出口を探し歩いていることが認められ・・・それから直ちに救助を求めに走つているのであつて午前七前二〇分頃にはすでに・・・が対岸にかけつけていることから考えても、極めて短時間の間のことであつたと考えられ・・・本件事故発生に至る前である一四日の午前五時頃までは、直ちにキャンプを中止したりする必要を感ずることはあり得ず、同日午前六時頃からの急激な降雨のため一時に同河川が増水氾濫し、甲が同所から生徒らを脱出させようとした時は、もう生徒らが脱出することは無理な程の激流と化し手の施し様がなかつたことが認められ・・・前日来の雨の影響も否定し得ないとしてもこの様な降雨、増水の状況下で甲につきキャンプ設営を中止、変更し、危険の防止に必要な措置をとることの義務違背を問うことは、不可能をも強いるにひとしく疑問であると言わざるを得ない・・・そこで進んで、本件事故の原因たる右異常な降雨、出水の面から、甲の責任について検討を加えることとする。

宮崎地判昭和43年4月30日

とした上で、

・・・青井岳地区は急峻な山に囲まれた多雨地帯であり、県内他地点より比較的降雨日数、降雨量が多く、更に境川は山間の渓谷を流れる急流であるため降雨による増水も著しい・・・そこで・・・当キャンプ場より約二キロメートル境川の上流地点の青井岳駅構内にある・・・観測所設置の昭和二九年来の事故当日前に至る一三年間の一日の雨量について見ると・・・日雨量が二〇〇ミリを超えるのは一年に一回程度で・・・本件事故の発生した・・・八月一四日の日雨量は四六八ミリに達し、事故直前の同日午前六時から九時までの三時間のみでも二〇三ミリを記録している・・・このことは、日雨量の合計では、かつて過去一三年に一回しか記録しなかつた降雨が、又事故直前の三時間では一日の降雨量にしても一年に一度程度しかない二〇〇余ミリという全く記録上異例の異常な集中豪雨があつたことを明らかにしている。一日二〇〇ミリの降雨でさえ・・・宮崎市内の降雨量では最近一〇年間を調べて見てほとんどない・・・更に右異例の集中豪雨に伴う境川の増水が異常な出水であつたことは境川流域に永年住む住民が昭和一四年以来の増水だ・・・とか昭和一四年と同三九年と今回が大きな出水として記憶している又は今までに境川にこの程度の氾濫は三回位あつた・・・と述べているところよりも明瞭で・・・増水の急激さについてであるが、今回と同程度増水したと・・・各証言等から認められる昭和三九年の例では一日平均一三〇ミリの降雨の日が一週間連続しているのであつて、この場合は集中豪雨ではなく徐々に長時間の間に増水したものであることが推定されるし、付近住民である証人・・・、同・・・の「あれだけの短時間であんなに水が出たのは初めてである」という各証言から見るとかつて例のない程の急激な増水であつたことがうかがわれ・・・
・・・右認定の如く当日の事故直前三時間の集中豪雨が全く記録的、異常のものであり、それに伴う境川の増水の急激さも過去に例を見ない程度のものであること自体これを予見することの困難さを示して余りあるものがあるが・・・本件集中豪雨の範囲は二〇平方キロメートル位の小規模のもので、特殊な条件の重なり合いで生ずる現象であり予測は非常に困難であり、更に熱帯性低気圧或は台風は当時沖繩付近にありその直接の影響とも言えないとして、気象観測の専門官・・・もその予測はなし得ないとし・・・前日の八月一三日夕刻まで「今日はくもり時々にわか雨」「明日は南東の風晴れたり曇つたり」と全く集中豪雨をうかがわせるような予報はなされておらず、翌八月一四日午前五時三〇分発表の大雨波浪注意報においてさえ「沖繩付近に熱帯性低気圧があつてゆつくり北西に進んでいますので雨は長続きしそう、今後の雨量は海岸地方で一〇〇ないし一五〇ミリ山沿い地方では五〇ないし一〇〇ミリに達しますからがけくずれや山くずれに注意して下さい」という程度の予報をなしているのみで・・・事故直前までの青井岳付近の降雨量が八月一二日46.8ミリ、一三日61.6ミリ、一四日(〇時より五時まで)四三ミリと境川の水位に変化の認められる様な降雨がなかつたことなど諸般の事情から考えると出発前に先輩の教諭から出水には注意せよとの注意を受け、本件集中豪雨が既に発生していた熱帯性低気圧に遠因があり、前日及び事故の朝までの断続的降雨が増水に影響するところがあつたとしても、本件事故直前の三時間内に二〇〇余ミリという突発的異例の局地的集中豪雨及びそれに伴う異常に急激な境川の増水の現象は通常人の注意能力をもつてしてはとうてい予見することは不可能なことであつたと判断しなければならない。

宮崎地判昭和43年4月30日

として、集中豪雨及びそれに伴う増水の予見可能性川の急激な増水についての予見可能性も否定しています。

裁判所の過失の判断

その上で、

本件キャンプ設営地が管理人の常駐する著名な公営キャンプ場内と一般に考えられていた場所であることなど諸般の事情を考慮するとき、甲につき事前に実施踏査をする義務違背、キャンプ場所選定に関する義務違背ありとは断定できず、又事故直前に至るまでの気象状況、降雨量、天気予報などを見るとき甲につき気象状況を確実に把握し、その変化に即応してキャンプを中止するなど危険の発生を未然に防止する措置をとるべき義務の違背があつたものとも考えることができないばかりでなく、本件事故は全く異例の突発的局地的集中豪雨という偶然的、不可抗力的事実に基因するものであり、甲につき本件事故発生につき過失は認められないものというべく、結局犯罪の証明が無かつたことに帰するから、刑事訴訟法第三三六条により被告人に対し無罪の言渡をする。

として無罪判決を下しています。

考察

しかし、近時においては、山岳地帯のキャンプ場の中州にテントを張ることの危険性は広く指摘されています。また、刑事事件では民事事件より過失の認定のハードルが高いと考えられています。
これらのことからしますと、今日同様な事故が生じた場合、少なくとも民事上の過失については、これが認定される可能性はあり得るものと考えられます。

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