相続

遺言執行者について最初に知っておきたいこと

遺言執行者の概要

遺言執行者とは

亡くなった方が遺言書を残していた場合、遺言書で遺言執行者が指定されていることがあります(民法1006条1項参照)。
また、相続に利害を有する人の請求により、家庭裁判所が遺言執行者を選任することもあります(民法1010条参照)。

この遺言執行者とは、遺言を残した方が亡くなった後(相続開始後)に、遺言の内容を実現するための相続財産の管理、処分等をおこなう人です。

遺言執行者は例外的な場合を除き必須ではありません

遺言を残す場合、あるいは遺言が残っていた場合に、必ず遺言執行者を置かなければならないというわけではありません。

ただし、遺言により相続人の廃除(推定相続人の相続資格を奪う制度。これにより、遺留分もなくなる。)をするような場合、遺言執行者は必要となります(民法893条参照)。
また、預貯金・有価証券などの分配、遺贈の登記などに関しては、遺言執行者を置いた方が手続きを円滑に進められることもあります。

遺言執行者が存在すると相続財産の処分は制限されます

遺言執行者を置いた場合、相続人は相続財産を勝手に処分することができなくなります(民法1013条1項参照)。

遺言内容の実現と執行行為

ところで、遺言の内容を実現するためには、相続開始後に執行行為を必要とするものと、特別な執行行為を必要としないものがあります。

執行行為を必要としないものとしては、相続分の指定、特別受益の持戻しの免除などがあります。

一方、遺言の内容を実現するのに執行行為を必要とするものの中には、遺言執行者でなければ執行できないものと、遺言執行者でなくとも執行できるものがあります。
前述のとおり、被相続人が遺言書で推定相続人の廃除、認知等をおこなっている場合、遺言執行者がその執行をおこなう必要があります。
遺贈等は遺言執行者でなくとも執行が可能です。

遺言執行者の指定

遺言執行者の指定とその資格

遺言執行者を遺言者が生前に指定しようとするときには、遺言で指定しておく必要があります(1006条1項参照)。
尚、遺言者執行者の指定を第三者に委ねることも可能です。

遺言執行者になるのには、特別な知見は要求されておらず、未成年者および破産者以外の人であれば、だれでも遺言執行者となる資格はあります(民法1009条参照)。
相続に対し利害を有する人、たとえば、相続人でも構いません。

遺言執行者に指定されても辞退できます

遺言者が遺言の中で遺言執行者を指定していた場合でも、遺言執行者に指定された人が当然に遺言執行者になるわけではありません。また、指定された人に遺言執行者への就任義務が発生するわけでもありません。
遺言執行者に指定された人は、遺言執行者への就職を辞退することも出来ます(民法1007条1項参照)。

遺言執行者の指定がない場合

遺言により遺言執行者に指定された者が就職を辞退した場合、遺言執行者が存在しない状態となります。
また、被相続人は、必ずしも遺言執行者を指定する必要がないことから、遺言で遺言執行者の指定がなされていない場合にも、遺言執行者は存在しない状態となります。

前述のように、遺言執行者は特定の場合を除き、必須ではないことから、遺言執行者不存在の状態で遺言を執行していくことも可能です。
また、相続人、遺産債権者、受遺者などの遺言執行に対する利害関係人は、家庭裁判所に対し、遺言執行者の選任を申立て、選任してもらうことも可能です(民法1010条参照)。

遺言執行者の解任・辞任

遺言執行者は解任できます

遺言執行者が、相続財産の管理、遺言執行の報告などの遺言執行者としての任務を怠っていたり、一部の相続人の利益代表のように振る舞っていたり、行方不明となるなどした場合、相続人、受贈者などの利害関係人は、遺言執行者の解任を家庭裁判所に求めることが出来ます(民法1019条1項参照)。
この解任を求めるためには、利害関係人は、家庭裁判所に対し、遺言執行者解任の審判を申し立てることとなります。

遺言執行者は辞任できます

遺言執行者は、正当な理由がある場合には、遺言執行者に就職した後、遺言執行者を辞任することもできます(民法1019条2項参照)。
しかし、辞退する場合と異なり、一度遺言執行者となった後に辞任するためには、遺言執行者の辞任許可審判を家庭裁判所に申立て、その許可審判を得ることが必要となります。

遺言執行者の職務と報酬

遺言執行者の職務について

遺言執行者の職務としては、①財産目録の作成、交付(民法1011条参照)、②遺産の管理、③主に金融財産(預貯金、有価証券など)の換金と分配、④相続財産の引き渡し、⑤遺言執行状況の報告などがあります。

遺言執行者の報酬および遺言執行費用の負担について

遺言執行者の報酬に関しては、遺言書の中で定めておくことができます。
遺言書の中で定められていない場合は、家庭裁判所が報酬額を決めることができます(民法1018条参照)。

尚、遺言執行者の報酬も遺言執行費用に含まれると考えられており、相続財産の負担となります。
特に、遺言などで遺言執行費用の負担者、負担方法が決められていない場合、実務的には、遺産から遺言執行費用(遺言執行者の報酬およびそれ以外の遺言執行に必要な費用)を控除した金額を、相続人へ配分することが多いものと思われます。

遺言執行者の責任とその対処

遺言執行者は、民法1012条3項が準用する644条の善管注意義務を、遺言執行業務に関して負うこととなります。
そこで、上記の遺言執行者の職務上、何らかの過誤があった場合、相続人らから善管注意義務違反として損害賠償請求を受けることがあり得ます。中には裁判にまで発展するケースもあります。

また、遺言の文言の解釈等の遺言執行業務上の見解の相違から、遺言執行者と相続人との間で訴訟が提起されることがあります。
更に、上記の遺言執行者解任審判を申し立てられた場合、審判手続きに対応する必要が生じます。

このようなこともあり、遺言執行者に指定された人も、遺言執行者への就職を承諾するかについては良く考える必要があります。

遺言執行者の法的責任と損害賠償義務、およびその他の理由により遺言執行者が裁判手続きの当事者となる場合に関しては、下記の記事でも扱っておりますので、参考にしていただければと思います。

尚、遺言執行者も遺言執行行為に関し弁護士などの第三者に委任することが可能です。
遺言執行業務に不安はあるが故人との関係で遺言執行者を引き受けざるを得ない場合には、弁護士に依頼する等、第三者に助力を求める方法もあります。

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