相続

相続開始の時期と場所~法的には、いつ、どこで開始したことになる?

この記事で扱っている問題

相続開始時に相続人が死亡している場合、その相続人は相続財産を承継することはできないことから、相続人が被相続人と近い時期に亡くなったような場合、相続開始の時期が問題となります。
また、相続に関する争いが生じた場合、どこの裁判所に訴状あるいは申立書を提出すればよいかを決めるにあたり、相続開始の場所が問題となります。

ここでは、相続開始の場所および時期について、民法の条文をもとに解説します。

法律問題でお悩みの方ご相談ください03-6457-9455受付時間 6:45-18:00 [ 土日・祝日除く ]

メールでの お問い合わせ お気軽にお問い合わせください

相続の開始について

相続の法律に関する基本事項は民法の第5編に定められており、その第5編は次のように民法882条からはじまっています。

第五編 相続
第一章 総則
(相続開始の原因)
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。
(相続開始の場所)
第八百八十三条 相続は、被相続人の住所において開始する。

民法822条、823条

このように、相続は被相続人が死亡したとき、被相続人の住所にて開始することがわかります。

それでは、相続開始の時期となる被相続人が死亡したときとは、どのような時点を指すのでしょうか。
入院中に病室で医師、家族に看取られた場合は、医師が死亡確認した時点が「死亡」したときといえそうですが、雪山で行方不明となり、その後雪解けとともに死体が発見されたような場合、いつの時点が「死亡」したときといえるのでしょうか。
また、相続開始の場所となる被相続人の住所とは、どの場所を指すのでしょうか。

ここでは、これらの点について解説します。

相続開始の時期について

問題の所在

相続開始の時期が多少ずれても、実際に遺産分割などがおこなわれるのは、相続開始から相当時間経過後になるのが通常であることから、問題がないようにも思われます。

しかし、民法は、相続の効力として896条において、

第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

民法896条

と規定しています。

この民法896条からすると、被相続人の死亡と同時に被相続人の財産が相続人に承継されることから、相続開始時点に生存していなければ承継できないこととなります。
つまり、相続開始の時期に相続人が存在しなければ、その相続人は被相続人の財産を相続することはできないこととなります。
このことを「同時存在の原則」といいます。

このことは、それほど問題とならないこととも思われますが、同一事故で夫以外にも相続人(親、兄弟姉妹など)がいる妻と妻以外の相続人のいない夫の夫婦が死亡した場合、夫が先に死亡しているのであれば、妻が夫を相続し、妻の相続人が夫と妻の財産を相続することとなります。
しかし、妻が先に死亡したのであれば、夫が妻の財産の一部を相続し、夫が相続した妻の財産と夫の固有の財産は、特別縁故者などが存在しなければ国庫に納められることとなります(相続人のいない場合の相続財産の扱いは下記の記事で解説しています。)。

このようなこともあり、相続開始の時期がどの時点であるのかは、場合によっては、重要な問題となります。

相続開始の時期である「死亡」について

それでは、具体的に死亡とはどの時点を指すのでしょうか。

相続法で問題となりうる死亡としては次のものがあります。

①自然的死亡

②認定死亡

③失踪宣告

①自然的死亡は、医学的に死亡が確認された瞬間が死亡時刻となり、その死亡時刻が相続開始の時期となります。
死亡時刻が明確でないときにも、可能な限り推定することが求められています。
しかし、時刻の推定が困難な場合、死亡した日の24時が死亡時刻とされます。

②認定死亡とは、自然災害などにより、諸事情からすると死亡したことは確実と考えられるものの、死体の確認が出来ない場合、戸籍法89条に基づき、戸籍に死亡の記載をおこなうものです。
この認定死亡においては、推定死亡時が相続開始の時期とされます。
しかし、死亡が「推定」されているにすぎないことから、異なる時刻に死亡していたことを証明すれば、相続開始の時期は変わることとなります。

③失踪宣告とは、民法30条、31条により、不在者の生死が七年間明らかでないとき、または死亡の原因となる危難に遭遇した者の生死が危難が去った後1年間明らかでないときに、死亡したものとみなす制度です。
前者の不在者に関しては、7年が経過した時点、後者に関しては危難が去った時点で死亡したものとみなされ、その時点が相続開始の時期となります。
尚、認定死亡と失踪宣告に関しては、下記の記事で解説しています。

同時死亡について

この記事の冒頭で、同一事故において夫婦が死亡した例をあげましたが、①自然的死亡として扱われ、異なる死亡時刻が確認あるいは推定されていれば、夫婦間の相続関係を確定することが可能となります。
しかし、2人ともに死亡時刻の推定が困難であれば、2人ともに死亡日の24時に死亡したものとされます。
また、民法32条の2は、このようなケースについて次のように規定しています。

第六節 同時死亡の推定
第三十二条の二 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

民法32条の2

しかし、この民法32条の2は推定規定であることから、異なる時刻に死亡したことを証明すれば、同時刻に死亡したとの推定は覆すことができます。

いずれにしましても、死亡時刻の推定が困難な場合、上記の夫婦は、相続上も同時に死亡したものとして扱われることとなり、その場合、夫婦間の相続は発生しないものとされます。

その結果、冒頭の例であれば、妻の財産は、妻の(夫以外の)相続人に相続されることとなります。
一方、夫の財産は特別縁故者などが存在しなければ国庫に納められることとなります。

相続開始の場所について

相続開始場所は、遺産分割などの相続関連の争いについて、訴訟提起、調停申立てなどをおこなう場合などに問題となります。
相続開始の場所を管轄する裁判所に土地管轄が生じます。

民法は、人の住所に関し、下記のように規定しています。

第四節 住所
(住所)
第二十二条 各人の生活の本拠をその者の住所とする。
(居所)
第二十三条 住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。
2 日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。
(仮住所)
第二十四条 ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。

民法22条~24条

このように、人の生活の本拠が住所とされ、それがわからないときには、居所、それもわからないときには、最後の住所といった順に相続手続き上の住所が決められることとなります。

関連記事

TOP