雇用

賃金の支給日について

給料支給日の問題

Aさんらの悩み

AさんはX社で正社員(以下、期間の定めのない労働契約を会社との間で締結している者を「正社員」といいます。)として働いていますが、今年からX社が年俸制を導入したことから、1年分後払いされると大変だと悩んでいます。

Bさんは、知人が新たに立ち上げたY社に正社員として働くこととなりましたが、給与支払日は毎月第3木曜日といわれました。Bさんは、これまで何度か転職していますが、このような給料日の決め方をしていた会社はこれまでなかったことから、不思議に感じています。また、具体的な給料支給の日付が、月によって変わることから、カードの支払日と給料支給日の関係が気になっています。

Cさんは、Z社で正社員として勤務していますが、思わぬ災害で家の一部が損壊し、早急に修繕しなければならなくなりました。よくドラマに出てくるような給料の前払いを会社に頼めるものなのか思い悩んでいます。

Aさん、Bさん、Cさんの悩みをどのように考えれば良いのでしょうか。

給料の支給時期の規定

Aさんらの悩みは、主に給料の支給時期の問題といえますが、下記のようなことから、賃金は、毎月一定の期日に1回以上支払わなければならないとされています。
そこで、Aさんのケースでも年俸であるから年1回で支払うというわけにはいきません。また、Bさんのケースでは、毎月一定の日に支払うことにはならないことから、このような支給日の取り決めは許されません。
更に、Cさんのような賃金の前払いも、下記のように、一定の範囲で法律上、義務付けられています。

賃金の支給方法に関する規定

労働基準法24条2項

毎月一回以上の支払い

賃金の支給方法に関しては、労働基準法24条2項において、

賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

労働基準法24条2項

と規定されており、同項の「厚生労働省令」として、労働基準法施行規則8条では、

第八条 法第二十四条第二項但書の規定による臨時に支払われる賃金、賞与に準ずるものは次に掲げるものとする。
一 一箇月を超える期間の出勤成績によつて支給される精勤手当
二 一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
三 一箇月を超える期間にわたる事由によつて算定される奨励加給又は能率手当

労働基準法施行規則8条

と規定していることから、上記の1号から3号に該当するもの以外の賃金は、労働基準法24条2項により、「毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わ」れることとなります。

そこで、会社は、従業員に対し、労働基準法24条2項により、毎月1回以上賃金を支払う義務を負います。
このことは、年俸制でも異ならないと考えられており、年俸額を12等分するなどして、毎月支払う必要があるとされています。

一定の期日を定めた支払い

次に、同じく労働基準法24条2項により、賃金は、「一定の期日を定めて」支払うこととなっています。毎月25日といった決め方は、一定の期日を定めたことになりますので当然問題ありません。また、毎月月末という決め方も問題がありません。尚、該当日が休日にあたる場合、支給日を前営業日あるいは、後営業日とすることは、同条の規定に反するものではありません。

しかし、Bさんのケースのように、毎月第3木曜日といった決め方をしますと、月によって、実際の支給の日がかなり変動することから、このような支給日の決め方では、「一定の期日を定めて」とはいえないと考えられています。

労働基準法25条と賃金前払い

次にCさんのケースをみてみます。

賃金の前払いについては、労働基準法25条において、

使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

労働基準法25条

と規定されています。そして、同条の「厚生労働省令」として、労働基準法施行規則9条では、

第九条 法第二十五条に規定する非常の場合は、次に掲げるものとする。
一 労働者の収入によつて生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合
二 労働者又はその収入によつて生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合
三 労働者又はその収入によつて生計を維持する者がやむを得ない事由により一週間以上にわたつて帰郷する場合

労働基準法施行規則9条

と規定していることから、同条1号から3号に該当する場合、労働基準法25条による賃金の前払いを会社に請求することが出来ることなります。

Cさんの場合は、労働基準法施行規則9条の1号に該当すると考えられることから、前払いを受けることが出来そうです。
しかし、労働基準法25条で前払いを受けられるのは、「既往の労働に対する賃金」に限定されていることから、既に働いた分の賃金を通常の給料支給日より早く支払ってもらうことができるということで、同条から、将来働く分の賃金を前払いする義務を会社が負うことになるわけではありません。

Aさんらの悩みと賃金の支給時期

以上のことから、Aさんの場合、年俸を分割した金額を毎月一定の日に受け取ることができますので、悩みは杞憂ということになります。
一方、Bさんのケースは、Y社の給料日の取り決めは、労働基準法24条2項に反することから、Bさんは、会社に対し、給料日の特定方法を変えて欲しいと要求することが可能です。

Cさんは、会社に対し、未払い分の賃金を給料日前に支払うよう求めることは労働基準法25条から可能となりますが、将来の労働分まで支払ってもらえるかは、会社の規定によるものと考えられます。

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