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公序良俗違反とは?~その意味、具体例、法的効果と金銭返還請求など

この記事で扱っていること

ここでは、「公序良俗違反」の意味と、法的位置付け、適用範囲、公序良俗違反が認定されたときの法的効果などの事項について解説を加えた上で、実際に公序良俗違反が問題となった近時の裁判例の確認をおこないます。

更に、公序良俗違反となる行為に関連して支払った金銭の返還請求について、不法原因給付との関係に触れながら、判例を通じて説明します。

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公序良俗違反について

公序良俗違反とは

法律用語として、「公序良俗違反」という言葉がよく出てきます。
しかし、日常用語ではないこともあり、解ったようで解らない言葉でもあります。

公序良俗違反(こうじょりょうぞく)という用語は、「公序」「良俗」「違反」の3つの単語からなります。
「公序」とは、「公の秩序」の略語で、「良俗」は「善良の風俗」の略語です。

民法90条は、

公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

民法90条

と規定していますが、公序良俗違反とはこの民法90条の「公の秩序又は善良の風俗に反することです。

しかし、公の秩序も善良な風俗も時代により変遷することから、どのような行為が公序良俗違反に該当するかは、時代により異なることとなります。

公序良俗違反とされる行為の効力

法律行為自由の原則から、合意当事者は、当事者間の合意内容に拘束されるのが原則です。
しかし、民法90条は、形式的に成立した合意が公の秩序あるいは善良の風俗に反する場合、合意(あるいは法律行為)を無効とします。
そのことにより、当事者は合意内容への拘束を解かれる(あるいは法律行為により生じた結果がなかったことにされる)こととなります。

尚、公序良俗違反により、ひとつの行為の一部のみを無効とすることも可能と考えられています。

公序良俗違反の適用範囲

元々、「公の秩序」は国家社会の一般的利益、「善良の風俗」は社会の一般的な倫理・道徳観念を意味するとされ、各々の適用範囲も異なると考えられていました。
しかし、近時では、このふたつを特に分けることをせずに、「公序良俗」ひとくくりで社会的妥当性を意味する抽象的な概念ととらえるのが一般的となっています。

この公序良俗違反は、民事事件、労働事件、行政事件など幅広い事案で用いられています。

公序良俗の法的な位置付け

公序良俗は、上記のように抽象的な概念であり、公序良俗違反は、下記の記事で解説しています信義誠実義務違反(民法1条2項)、権利濫用(同3項)などとともに一般条項といわれます。
この一般条項は、個別具体的事案に形式的な法適用をした場合の不都合を回避し、妥当な結論を導くためにも用いられます。

そして、どのような行為が公序良俗違反をはじめとする一般条項に該当するかの判断は、裁判官の幅広い裁量に委ねられていると考えられています。
しかし、それだけに、一般条項が多用されると、いつ一般条項の適用により、契約条項の効力の発生が妨げられるのか不透明となり、締結された契約の内容の実現性に対する事前予測可能性が低くなることから、取引の安全性が妨げられることとなりかねません。
そのこともあり、公序良俗違反のような一般条項の適用には慎重な姿勢が取られています。

近時の公序良俗違反が問題となった裁判例としましては、

  • 地方自治体が所有していた温泉施設を、私企業に対し負担付贈与した契約が、公序良俗違反に該当すると主張された住民訴訟(福岡地判令和3年4月28日)
  • 有期雇用契約の不更新条項等が、労働契約法18条の趣旨に反し、公序良俗違反により無効であるとの主張がなされた労働事件(横浜地裁川崎支部判決令和3年3月30日)
  • 違約金合意が公序良俗違反であるとの主張がなされたプログラムの著作権侵害差止等請求事件(東京地判令和3年3月24日)
  • 弁済がなされなかったとき、別の契約の効力に影響を及ぼし、借入金額をはるかに超える損失が生じることとなる特約について、暴利的なもので公序良俗違反で無効と認定された譲渡代金返還請求事件(東京地判令和3年3月4日)
  • 従業員同士の私的交際の禁止と違約金を定めた同意書を、公序良俗違反とした違約金および損害賠償請求事件(大阪地判令和2年10月19日)

等があります。
このように幅広い裁判において、公序良俗違反の主張、認定がなされています。

公序良俗違反に関連した金銭の返還請求

公序良俗違反行為の依頼料として支払った金銭の返還請求について

公序良俗違反を理由に契約が無効とされた場合、公序良俗違反の契約に基づいて支払った金銭を契約相手方が保持し続ける根拠はなくなります。そこで、その金銭の返還を求めることが出来るのが原則です(民法703条参照)。

それでは、公序良俗違反となる犯罪行為を第三者に依頼し、依頼料を支払ったものの、その後、気が変わり依頼を取消した場合、依頼料の返還を求めることは出来るのでしょうか。

たしかに、契約を解除すれば、遡及的に契約関係が覆滅されることから、やはり、支払った依頼料を契約相手が保持し続ける根拠はなくなります。
そうしますと、この場合も支払った依頼料の返還を請求出来るように思われます。

しかし、民法708条は、

不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

民法708条

と規定しています。

同条の「不法な原因のために給付」することを「不法原因給付」といいます。

犯罪行為の依頼者は同条の「不法な原因のために給付をした者」に該当しますので、「その給付したものの返還を請求することができない」こととなります。
したがって、依頼料の返還を請求することはできないのが原則です。

潜在的被害者へ撒き餌的に配った金銭の返還請求

それでは、犯罪の対価ではなく、潜在的被害者へ撒き餌的に配った金銭の返還を求めることは出来るのでしょうか。

これに類する事案としては、架空の投資話で被害者から金銭を騙取した後、更に出資させるため、あたかも実際に投資をおこなっているように見せかける目的で、配当金名目の金銭を被害者に配った事件があります。
この事件では、被害者が加害者に対し、騙取金等の返還を求めて提訴しています。

この裁判において、下級審では、被害者は詐欺により騙取金相当額の損害を被っているものの、仮装配当金を受け取っていることから、仮想配当金相当額の利益も受けていると判断しています。
このことから、被害者の損害額の算定において、騙取金の額から仮装配当金の額を控除しています。

しかし、この裁判の上告審(最判平成20年6月24日)においては、

・・・本件詐欺が反倫理的行為に該当することは明らかであるところ,被上告人は,真実は本件各騙取金で米国債を購入していないにもかかわらず,あたかもこれを購入して配当金を得たかのように装い,上告人らに対し,本件各仮装配当金を交付したというのであるから,本件各仮装配当金の交付は,専ら,上告人らをして被上告人が米国債を購入しているものと誤信させることにより,本件詐欺を実行し,その発覚を防ぐための手段にほかならないというべきである。そうすると,本件各仮装配当金の交付によって上告人らが得た利益は,不法原因給付によって生じたものというべきであり,本件損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として本件各騙取金の額から本件各仮装配当金の額を控除することは許されないものというべきである

最判平成20年6月24日

と判示し、仮装配当金相当額の控除を否定しています。

この判決からも、民法708条は反社会的・反道徳的行為をした者の法的な保護を拒否するものであることから、直接の犯罪対価のみでなく、犯罪と一定の関連性のある金銭の返還にまで同条の適用の余地があることがわかります。

公序良俗違反と不法原因給付

民法708条は、民法90条に定める公序良俗違反行為をおこなった者(のうち特に悪質性が高い者)に対する、法的救済を拒否するものでもあります。
よって、民法708条は民法90条の実効性を担保する役割も果たしていると言い得ます。
尚、民法90条の適用範囲と民法708条の適用範囲の関係につきましては、

  1. 民法90条の適用があるケースでは全て民法708条の適用があり得るとする説
  2. 民法90条の適用があるケースの中で特に悪質性が高いものに民法708条の適用があり得るとする説

など、諸説あります。

上記の2の説を採用した場合、本段落の第1文の民法709条の適用される範囲としては、括弧書部分の条件が追加されることとなります。

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