雇用

過半数代表者と就業規則変更

就業規則改定時の疑問

Aさんの会社には労働組合が無いため、就業規則の改定に際しては従業員の過半数代表者の意見聴取がなされています。
しかし、従業員の過半数代表者はAさんたち一般の従業員が知らないところで、いつの間にか会社の人事担当が従業員の中から適当に決めているようです。先日も、人事が決めた従業員の過半数代表者の意見聴取に基づき、知らないうちに就業規則が変更されていました。
このような就業規則の変更はどの様に考えれば良いのでしょうか。

就業規則の変更に必要な手続き

ところで、常態として10人以上が雇われている会社では就業規則を作成することが義務づけられていますが、その10人以上とは必ずしも正社員が10人以上というわけではありません。契約社員であっても勤務実態によってはこの10人の人数の算定に含まれます。

次に、就業規則の変更には過半数労働組合があればその意見聴取を、無い場合には従業員の過半数代表者の意見を聴取する必要があります(労働基準法90条)。Aさんの会社には労働組合がありませんので、就業規則の変更に際して会社は従業員の過半数代表者の意見を聴取する必要があることとなります。
尚、ここでいう意見聴取には協議をしたり同意を求めることまでは要求されていません。過半数代表が反対しても意見聴取をおこなったこととなり得ます。

過半数代表者の選出方法

それでは、従業員の過半数代表者はどのように決める必要があるのでしょうか。
過半数代表者について、労働基準法施行規則6条の2第1項に

一 法第四十一条第二号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
二 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。

労働基準法施行規則6条の2第1項

との規定があります。

このように、法令上も従業員の過半数代表者は、管理監督者でない従業員の中から投票、挙手等の民主的な方法で選出する必要があります。しかし、Aさんの会社の場合、投票、挙手等の民主的な方法で選出したとは言えないことから、Aさんの会社で「従業員の過半数代表者」とされ、就業規則改定に際して意見聴取された従業員は、法的には従業員の過半数代表者とは言えないことになりそうです。
そこで、Aさんの会社で意見聴取された人が法的に過半数代表者と言えないとすると、Aさんの会社の就業規則改定は意見聴取の手続きに瑕疵があることとなり、会社は、法的には意見聴取をせずに就業規則改定をおこなったことになりそうです。

意見聴取を経ない就業規則の有効性

それでは意見聴取のプロセスを踏まず変更した就業規則は有効なのでしょうか。
これに関しては、東京地判平成27年2月18日において、

就業規則の変更にあたっては,従業員代表の意見聴取,労働基準監督署への届出がなされていることが望ましい(労契法11条,労基法90条)ものの,就業規則の変更の有効性を認めるための絶対的な条件であるとはいえず,これらの事情は,労契法10条における「その他の就業規則の変更に係る事情」として,合理性判断において考慮される要素と解され・・・

東京地判平成27年2月18日

と判示されているように、意見聴取のプロセスを欠いて変更された就業規則が即無効となると考えられているわけではありません。他の事情と併せ鑑みて就業規則の変更が有効かが判断されることとなります。

したがいまして、Aさんの会社の改正後の就業規則も必ずしも無効であるとまでは言い切れないこととなります。

関連記事

ブログ(カテゴリー別)

最近の記事
おすすめ記事
  1. 被相続人の債務の返済義務

  2. 直前または当日の年休取得申請について

  3. ゴルフ場の落雷事故と法的責任

  4. 国家賠償法1条2項の求償について

  5. 遺言執行時の遺言の解釈

  1. 公序良俗違反について

  2. 山岳地帯での事故における法的責任について(その3)

  3. 山岳会での登山事故における法的責任について

  4. 登山事故の類型と民事訴訟について

  5. ツアー登山事故における法的責任について(その1)

TOP