休職とは?~その根拠、休業との相違、復職などについて

この記事で扱っている問題

休日に遊びに出かけ、ケガをし、会社での通常勤務が困難となったような場合、休職となることがあります。
類似の制度として休業もあります。

ここでは、休職の制度の概要、その根拠、休業との相違、休職からの復職、自然退職、解雇などについて、関連法規、判例などをみながら解説します。

休職について

業務外でのケガ、病気など、おもに労働者の個人的事情により、労務に従事させることが不能あるいは不適当な状態となったときに、使用者が、当該労働者の労務従事を免除、禁止することを休職といいます。
労働者からの申し出により休職となる場合もあります。

公務員に関しては、この休職制度の法律上の根拠として、国家公務員法61条、79条、80条、および地方公務員法28条2項が規定されています。

しかし、民間の労働者に関しては、法律上、使用者が労働者に対し、休職を命じうる根拠となる法律はありません。

そこで、民間企業において休職制度を設けるためには、就業規則に休職制度を規定する必要があります(労働基準法89条10号)。
また、入社時など労働契約締結時に、使用者は労働者に対し、休職制度を明示する義務を負っています(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条1項、労働基準法89条10号)。

就業規則に休職制度の規定が設けられていない場合、使用者は労働者に対し、休職を命じることはできません。
しかし、その場合でも、使用者と労働者が真意に基づいて合意をした場合、休職とすることは可能と考えられています。

休職と休業の相違

休職と休業は、ともに労働者が労務従事しないという点では類似しています。

しかし、休業は、労働者が労働時間に労働をなしえなくなるというものであり、会社全体など集団的な休業と個々人別の休業があります。

一方、休職は、一般的には個々人の事情によるものです。

また、休業に関しては、使用者に帰責性がある場合、休業手当の支給が法的に義務付けられています(労働基準法26条)。
一方、休職は無給が原則であり、例外的に就業規則に規定がある場合に賃金が支給されるにすぎません。
尚、健康保険により傷病手当金が支給されることがありますが、これは賃金とは別の話となります。

休業手当については、下記の記事で詳しく説明しています。

休職制度について

就業規則では、休職制度に関し

  • 休職事由
  • 休職許容期間
  • 休職期間中の給与、賞与など処遇
  • 休職期間の勤続年数算入取扱い
  • 復職できない場合の取扱い

などを規定しています。

そして、休職事由としては、

  1. 傷病休職
  2. 事故欠勤休職
  3. 起訴休職
  4. 出向休職
  5. 自己都合休職
  6. その他の休職

が規定されることがあります。

このうちの「5 自己都合休職」としては、留学期間中の休職などがあります。

傷病休職と復職、退職、解雇について

上記の「1 傷病休職」は、業務外の傷病により一定期間以上欠勤が継続した場合におこなわれるものです。
休職許容期間中に回復して就業が可能となれば、復職となり、休職許容期間が経過しても回復しないような場合には、(規定があれば就業規則の定めに従い)退職または解雇となります。

このような性質から、休職制度は、一種の解雇猶予目的の制度であるともいわれます。

休職後の退職、解雇の有効性について

休職制度の一環として、休職後に復職が認められず自然退職あるいは解雇となった場合、その自然退職あるいは解雇の有効性が問題となりえます。

上記のとおり、休職制度は就業規則に規定されますので、休職制度における休職後の退職扱い、解雇の有効性は、就業規則の解釈の問題として扱われるケースが多いものと思われます。

休職後の退職扱いが問題となった裁判例

事案の概要

休職後の退職扱いが問題となった近時の裁判例としては横浜地判令和3年12月23日があります。

この事件は、適応障害を発症して私傷病休職を命じられた後、休職期間の満了時に自然退職扱いとされた社員が、休職理由は休職期間中に消滅していたのであるから、その時点で復職させなければならなかったと主張し、従業員としての地位の確認などを求めたものです。

裁判所の判断

この裁判の自然退職扱いの正当性の判断に際し、裁判所は、まず、

被告会社の従業員就業規則に定める私傷病休職及び自然退職の制度は、業務外の傷病によって長期の療養を要するときは休職を命じ、休職中に休職の理由が消滅した者は復職させるが、これが消滅しないまま休職期間が満了した者は自然退職とするというものであるから、私傷病による休職命令は、解雇の猶予が目的であり、復職の要件とされている「休職の理由が消滅した」とは、原告と被告会社との労働契約における債務の本旨に従った履行の提供がある場合をいい、原則として、従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合をいうものと解するのが相当である。

横浜地判令和3年12月23日

として、就業規則の私傷病休職にかかわる自然退職の制度について、

  • 休職中に休職の理由が消滅した者は復職させ、消滅しないまま休職期間が満了した者は自然退職とするものであること
  • 復職の要件の「休職の理由が消滅した」とは、原則として、従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合をいう

ことを認定しています。

続いて、裁判所は、

・・・ある傷病について発令された私傷病休職命令に係る休職期間が満了する時点で、当該傷病の症状は、私傷病発症前の職務遂行のレベルの労働を提供することに支障がない程度にまで軽快したものの、当該傷病とは別の事情により、他の通常の従業員を想定して設定した「従前の職務を通常の程度に行える健康状態」に至っていないようなときに、労働契約の債務の本旨に従った履行の提供ができないとして、上記休職期間の満了により自然退職とすることはできないと解される。

横浜地判令和3年12月23日

としています。

ここでは、休職命令の理由とされた私傷病に関して私傷病発症前の職務遂行のレベルの労働を提供することに支障がない程度にまで軽快していれば、他の理由により支障があったとしても自然退職とすることはできないとしています。

これらをもとに、具体的事情について検討を加えています。

・・・まず、本件において、原告がり患した傷病、すなわち原告が休職するに至った原因、理由について検討することとする。
・・・原告の休職は、あくまで適応障害により発症した各症状・・・を療養するためのものであり、原告が入社当初から有していた特性、すなわち・・・職場内で馴染まず一人で行動することが多いことや上司の指示に従わず無届残業を繰り返す等の行動については、休職理由の直接の対象ではないと考えるべきである。
・・・次に、原告が・・・・日以降に療養を要することとなった直接の原因である適応障害について、その寛解時期を検討する。
・・・日付け診断書において、「適応障害にて通院加療して休職中であったが回復した」と診断した・・・ことが認められ・・・原告の適応障害は寛解したものと認められる・・・
・・・以上を前提に、原告が「従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった」といえる時期について検討する。
前記・・・のとおり、本件において、原告の休職理由はあくまで適応障害の症状、すなわち、被告会社における出来事に起因する主観的な苦悩と情緒障害の状態であり、人格構造や発達段階での特性に起因するコミュニケーション能力、社会性等の問題は、後者の特性の存在が前者の症状の発症に影響を与えることがあり得る・・・としても、相互に区別されるべき問題で・・・就業規則・・・条の規定に基づき原告の復職が認められるための要件(休職の理由の消滅)としては、適応障害の症状のために生じていた従前の職務を通常の程度に行うことのできないような健康状態の悪化が解消したことで足りるものと解するのが相当・・・
・・・そして、主治医・・・が診断した・・・日頃には、原告の適応障害は寛解したものと認められるものの・・・被告会社における原告の業務を知りうる立場にある産業医が、原告の復職を可能と判断したのが・・・日となっていることからすると、原告の休職理由となった、適応障害の症状のために生じていた従前の職務を通常の程度に行うことのできないような健康状態の悪化が解消したといえる時期は・・・日(注:産業医の診断が出た日)であると認めるのが相当である。よって、被告会社は、この産業医の診断が出た翌月の同年・・・日以降・・・就業規則・・・条の規定に基づき、原告を超過勤務に従事させず段階的に復職させるべきであったと認めるのが相当・・・

横浜地判令和3年12月23日

ここでは、

  1. 原告の休職は適応障害により発症した各症状を療養するためのもの
  2. よって、適応障害の症状のために生じていた従前の職務を通常の程度に行うことのできないような健康状態の悪化が解消した時点で休職の理由が消滅して復職の要件をみたしたこととなる
  3. したがって、被告会社は、産業医が復職可能と診断した翌月から段階的に復職させるべきであった

と認定し、就業規則の規定に基づき自然退職としたのは無効であるとして、従業員の地位を有することを認めています。

このように、上記裁判例では、休職の根拠となる就業規則の規定の解釈をおこなった上で、具体的事例において、何が休職の理由であり、その休職理由が休職許容期間内に消滅したいたかの判断をおこない、自然退職の有効性を判断しています。

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