雇用

退職時の賃金・退職金支払日

退職時の賃金支給日と退職金支払日の問題

AさんとBさんの悩み

Aさんは、来月末で退職することとなっています。
先日、家族が病気で入院し、急遽、お金が必要となりました。
そこで、社内規程では、退職金は、退職日の翌月末日に支払われることとなっているのですが、退職日までまだ1カ月以上あることから、退職日前に支払ってもらうことは出来ないものかと悩んでいます。

Bさんも来月末に退職する予定ですが、給与が月末締め翌25日払いとなっていることから、退職時も支給日がこれまで通りであると、来月分の最後の給料は、再来月の25日の支給となるように思われます。
そこで、Bさんは、来月分の給料を退職する来月末日に支給してもらえるよう会社に請求しようかと悩んでいます。

退職金と退職時賃金の支払日

しかし、下記のようなことから、Aさんの場合、退職金の前払いを請求する権利はないものとされています。
また、Bさんの場合、退職日当日は無理ですが、退職日から7日以内に最後の給料を支給するよう会社に請求することは可能です。

退職金の退職前支給請求の可否

退職金と労働基準法25条の「賃金」

前回の記事でもみましたが、労働基準法25条及び労働基準法施行規則9条1号により、「労働者の収入によつて生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合」は、「既往の労働に対する賃金」の前払いを会社に対し請求できます。
今回のAさんの場合は、家族が病気で入院していることから、Aさんの収入で家計が賄われているのであれば、具体的事情によっては、これまで働いた分の賃金の前払請求は可能となり得ます。しかし、今回のAさんの場合、月の給与ではなく、退職金の前払いの問題なので、退職金が労働基準法25条の「既往の労働に対する賃金」に該当するかが問題となります。

退職金の法的性質と支払時期

ところで、退職金につきましては、勤務年数に基礎賃金と支給率を掛けて算出されることが多いこともあり、賃金の後払い的性質も有していると考えられています。このような、賃金の後払い的性質からしますと、退職金も労働基準法25条の賃金に該当するようにも思われます。
しかし、退職金に関しましては、一定の勤務評価を考慮することがある等、功労報償的性質も有しており、通常の賃金とは異なるものと考えられます。
昭和26年12月27日基収5483号、昭和63年3月14日基発150号、婦発47号でも、

退職手当は、通常の賃金の場合と異なり、予め就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りるものである。

昭和26年12月27日基収5483号、昭和63年3月14日基発150号、婦発47号

とされているように、退職金は毎月の給料と異なり、退職という具体的な要件を充たした時に支払われるという性質を持っていることもあり、退職日前に支払いを求めることは出来ないと考えられています。

退職時の賃金未払い分の支給日

一方、退職時の賃金未払い分に関しては、労働基準法23条で、

第二十三条 使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
② 前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。

労働基準法23条

と規定されています。
この労働基準法23条1項から、退職者が、会社に対し請求すれば、会社は、7日以内の未払い賃金等の支払いを義務付けられることとなります。

退職時の賃金未払い分と退職金の支払日

以上のことから、Aさんは、社内規則に定められた支給日より早く退職金を支給するよう会社に請求する権利はないこととなります。
Bさんも、退職日である来月末日以前に来月分の給料を支払うよう会社に請求する権利はありません。しかし、労働基準法23条1項により、退職から7日以内に支払うよう請求することは可能です。

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