相続

作家死後の小説の権利の行方と小説の保護

作家が死後について気にしていること

Aさんは、若いころから趣味で書き続けてきた推理小説で、先日とある賞の大賞を受賞し、初めて単行本が出版されることとなりました。
Aさんの家族は皆亡くなっており、法定相続人もいないことから、「自分が死んだら大賞受賞作の著作権がどうなるのだろう」と早くも気になっています。

Bさんは、最近書き始めた山岳小説が時流に乗り、単行本として出版されることとなりました。
Bさんには、相続人として妻がいますが、自分の死後、自分の書いた本を勝手に改ざんされたりしないか、早くも気になり始めています。

作家の小説に対する権利

まず、作家が自らの書いた小説に対し法的に有する権利に関しましては、著作権法17条に、

(著作者の権利)
第十七条 著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
2 著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。」

と規定されています。
この著作権法17条の1項に2つ目の権利として規定されている「著作権」は、著作者が著作物に対し有する財産的な権利であり、ひとつめの「著作者人格権」は、著作者の著作物に対する精神的な権利といえます。

著作権の相続について

Aさんが気になっている著作権は、この財産的な権利であり、著作者の死後は、著作権も知的財産権のひとつとして、金融資産、不動産等の一般的な財産と同様に相続財産となります。
したがって、特に遺言で受贈者が指定されたりしていなければ、法定相続人が相続することとなります。
それでは、Aさんのように相続人がいない人が遺言も残さなかったような場合、残された著作権はどうなるのでしょうか。

上述のように、著作権も相続財産となりますので、一般的な相続財産と同様に、特別縁故者もいなければ、民法959条により処理されることとなります。
民法959条は、残余財産の帰属として、「・・・処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。・・・」と規定していることから、著作権も国庫に帰属するように思われます。
しかし、著作権法62条では、

(相続人の不存在の場合等における著作権の消滅)
第六十二条 著作権は、次に掲げる場合には、消滅する。
一 著作権者が死亡した場合において、その著作権が民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百五十九条(残余財産の国庫への帰属)の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
(以下省略)」

と規定されています。
そこで、著作権法62条1項1号により、特別縁故者もいない場合、著作権は国庫に帰属することなく消滅することとなります。
したがいまして、Aさんの場合も、遺言を残さず、特別縁故者がいなければ、Aさんが大賞を受賞した推理小説の著作権は消滅することとなります。

著作者死後の著作者人格権について

次に、先ほど引用しましたように、著作者の権利として著作権の他に著作者人格権がありますが、この著作者人格権としては、著作権法18条1項の「公表権」、19条の「氏名表示権」、20条の「同一性保持権」が規定されています。
このうち、著作権法20条1項は、

第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

と同一性保持権を規定しています。
Aさんが気にしているのは、この同一性保持権が自分の死後にどうなるかということです。
しかし、著作者人格権に関しては、著作権法59条で、

第五十九条 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。

と規定されており、著作権と異なり、一身専属的なものとされています。
そこで、著作者が死亡すると、著作者人格権は消滅するとも考えられます。
しかし、著作権法60条では、

第六十条 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

と規定されており、著作者の死後も一定の保護が図られるものとされています。
その保護に関しまして、著作権法116条で「著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置」として、死亡した著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹が侵害行為の差止請求、名誉回復措置を取ることができるとしています。
したがいまして、Bさんの場合、Bさんの死後、誰かがBさんの山岳小説を改ざんしようとした場合、Bさんの妻らがその改変行為に対する対抗措置をとってBさんの山岳小説を守ることとなります。

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