雇用

経営悪化による店舗閉鎖と解雇・雇止め

経営悪化による店舗閉鎖時の雇用問題

AさんとBさんは2年弱前から同じ店(以下「勤務店舗」といいます。)で契約社員(1年契約の期間の定めのある労働契約(以下「有期雇用契約」といいます。))として働いています。
この店を経営している会社は、同じエリアにいくつかの同業の店舗を出店しています。
しかし、勤務店舗の近くに同業の新規出店が続いたこともあり、勤務店舗の赤字が続くようになり、会社は、勤務店舗の閉店を決めました。
Aさんは、今日突然、店長から、「来月末で閉店するので来月末で解雇する。」と告げられました。Aさんは再来月に契約更新するつもりでいたことから大変困惑しています。
一方、来月末に契約を更新する予定だったBさんは、「契約の更新はしない。」と店長から告げられ、突然のことでもあって、途方に暮れています。
AさんとBさんは会社に対して何か言えないのでしょうか。

有期雇用の解雇の有効性

労働契約法17条1項と16条

まず、Aさんの場合、営業不振を理由とした有期雇用契約期間中の解雇ということになり、その有効性が問題となります。勤務している会社は、勤務店舗以外にも何店舗か運営していることもAさんの解雇の有効性と関係してきそうです。
労働契約法17条1項には、

使用者は、期間の定めのある労働契約・・・について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

労働契約法17条1項

と規定されています。
そこで、Aさんの場合、解雇に「やむを得ない事由がある」場合でなければ、会社の解雇は有効とはなりません。
一方、期間の定めのない労働契約(以下「無期雇用契約」といいます。)の解雇に関し労働契約法16条は、

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法16条

としています。
しかし、有期雇用契約では、特に契約の終期までの期間を区切って雇用契約を締結しているのですから、雇用契約の契約期間の終了前に解雇するには、労働契約法16条により無期雇用契約の解雇に求められている「客観的に合理的で、社会通念上相当」とされる事情より、強い特別な事情が必要であると考えられています。

有期雇用の解雇に関連した裁判例

これに関連した裁判としては、福岡高決平成14年9月18日があります。
この事件は労働契約法の制定前の事件ですが、この裁判における判決の趣旨は労働契約法制定後も及ぶと考えられます。
この裁判の事案は、3カ月の有期雇用契約を14年間及び17年間更改し続けていた従業員が、業績悪化を理由に会社から解雇を言い渡されたもので、裁判所は、解雇理由の存否の判断において、

抗告人ら(解雇された人たち)は,雇用期間を各3か月と定めて雇用された従業員であり・・・6月20日ころ,相手方との間で,同月21日から同年9月20日までの期間を定めた労働契約を締結しているところ,このように期間の定めのある労働契約の場合は,民法628条により,原則として解除はできず,やむことを得ざる事由ある時に限り,期間内解除(ただし,労働基準法20,21条による予告が必要)ができるにとどまる。したがって,就業規則・・・条の解雇事由の解釈にあたっても,当該解雇が,3か月の雇用期間の中途でなされなければならないほどの,やむを得ない事由の発生が必要であるというべきである。

福岡高決平成14年9月18日

とした上で、

相手方の業績は,本件解雇の半年ほど前から受注減により急速に悪化しており,景気回復の兆しもなかったものであって,人員削減の必要性が存したことは認められるが,本件解雇により解雇されたパートタイマー従業員は,合計31名であり,残りの雇用期間は約2か月,抗告人らの平均給与は月額12万円から14万5000円程度であったことや相手方の企業規模などからすると,どんなに,相手方の業績悪化が急激であったとしても,労働契約締結からわずか5日後に,3ヶ(ママ)月間の契約期間の終了を待つことなく解雇しなければならないほどの予想外かつやむをえない事態が発生したと認めるに足りる疎明資料はない。相手方の立場からすれば,抗告人らとの間の労働契約を更新したこと自体が判断の誤りであったのかもしれないが,労働契約も契約である以上,相手方は,抗告人らとの間で期間3か月の労働契約を更新したことについての責任は負わなければならないというべきである。したがって,本件解雇は無効であるというべき

福岡高決平成14年9月18日

としています。

一方、コンビニ部門からの撤退の伴い、コンビニのアルバイト社員(争いはあったが、裁判所は契約期間1年の有期雇用契約と認定)を解雇した事件(東京地判平成23年2月7日)では、整理解雇が無効であるとの主張に対し、裁判所は、整理解雇の4要件である、①人員削減の必要性、②解雇回避の努力、③人選の合理性、④解雇手続の妥当性を検討した上で、解雇を有効としています。

裁判例から考えられるAさんの解雇の有効性

これらの裁判例からしますと、Aさんの場合、整理解雇の4要件を検討した上で、解雇の有効性が判断されることとなりそうですが、他店舗への異動の可能性が②解雇回避の努力との関係で問題となりそうです。また、店長から解雇の必要性についての説明があったかが④解雇手続の妥当性との関係で問題となりそうです。

有期雇用の雇止めの有効性

労働契約法19条

一方、Bさんの場合は、来月末には現在の有期雇用契約の期限を迎えるため、有期雇用労働者の営業不振を理由とした更新拒絶である雇止めの有効性の問題となります。勤務している会社は、働いている店(以下「勤務店舗」といいます。)以外にも何店舗か運営していることもAさんの場合と同様に関係してきそうです。
有期雇用契約の雇止めに関しては、労働契約法19条に、

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

労働契約法19条

と規定されています。
第1号は、有期雇用契約が繰り返し更新され、雇止めが解雇と同視できるような状態になっていたような場合に、第2号は、従業員が雇用契約の期限に雇用契約が更新されると期待する合理的な理由があるような場合に適用されます。
Bさんの場合は、まだ雇用期間が合計で2年程度ですので、第1号ではなく、第2号の問題となりそうです。

有期雇用の雇止めに関連した裁判例

この2号に関しましては、有期雇用契約の従業員の雇止めの効力が争われた裁判の上告審判決である最判昭和61年12月4日の要件を規定したものといわれています。そして、この判決では、

・・・工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたもので・・・五回にわたり契約が更新され・・・このような労働者を契約期間満了によつて雇止めにするに当たつては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかつたとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる

最判昭和61年12月4日

と、継続が期待されていた有期雇用の雇止めの有効性の判断には解雇法理が類推されるとしますが、

しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきで・・・独立採算制がとられている被上告人の・・・工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかつたとしても、それをもつて不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである

最判昭和61年12月4日

とした上で、

・・・被上告人においては・・・工場を一つの事業部門として独立採算制をとつていたことが認められるから、同工場を経営上の単位として人員削減の要否を判断することが不合理とはいえず、本件雇止めが行われた・・・の時点において、柏工場における臨時員の雇止めを事業上やむを得ないとした被上告人の判断に合理性に欠ける点は見当たらず、右判断に基づき上告人に対してされた本件雇止めについては、当時の被上告人の上告人に対する対応等を考慮に入れても、これを権利の濫用、信義則違反と断ずることができないし、また、当時の・・・工場の状況は同工場の臨時員就業規則七四条二項にいう「業務上の都合がある場合」に該当する

最判昭和61年12月4日

として、結論としては、雇止めを有効としています。

労働契約法19条1,2号該当性と雇止めの有効性について

ところで、ここで問題となる労働契約法19条1号あるいは2号の該当性に関しては、ⅰ)雇用の臨時性・常用性、ⅱ)契約の更新回数、ⅲ)雇用の通算期間、ⅳ)契約期間管理状況、ⅴ)雇用契約更新への使用者側の言動等から判断されると考えられています。
Bさんの場合は、2年弱の雇用期間なので、ⅱ)及びⅲ)からしますと、2号に該当するか疑問があります。
仮に2号に該当するとしても、会社の店舗ごとの独立採算志向が強ければ、やはり、雇止めが有効であると認定される可能性が高いように思われます。

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