雇用

入社前・再雇用前の使い込みを理由とした懲戒解雇

入社前の事情による懲戒解雇の問題

Aさんの問題

Aさんは以前の職場で使い込みをしました。しかし、当時勤めていた会社の温情で告訴もされず、依願退職の形で会社を辞めています。
Aさんはその後、人材募集広告の出ていた今の会社に賞罰欄に使い込みの事実を書かずに採用されました。
しかし、あるきっかけから以前の会社を辞めた経緯を今勤めている会社に知られることとなり、懲戒解雇を申し渡されました。
Aさんは会社の懲戒解雇処分は不当だと主張できるのでしょうか。

前職の懲戒を履歴書へ記載する必要性

まず、以前の職場での懲戒の事実を履歴書の賞罰欄に記載しなければならないのでしょうか。
一般的には賞罰欄の罰は前科を指しているとされており、以前の職場での懲戒の事実は記載する必要はないと考えられています。
Aさんの場合、使い込みの事実は前科になっていないことから、賞罰欄の記載事実とはならないこととなります。
したがって、使い込みの事実を記載しなかったことだけをもって会社はAさんを懲戒解雇にすることは出来ないと考えられます。

前職の懲戒を面接時に隠すこと

それでは、Aさんが現在勤務している会社の入社採用面接の際、前職の退職理由を聞かれた時に前職を円満退社していることを強調していた場合はどうなるのでしょうか。
この場合、仮に現在勤務している会社が重大な職歴詐称や信頼関係欠如行為を就業規則で懲戒解雇事由として規定していた場合、前職での使い込みの程度、現在の職種等により懲戒解雇が有効となる場合もあり得ます。
Aさんの場合、入社の採用面接時に前職の退職理由についてどの様に答えていたか、現在の会社の就業規則の懲戒解雇事由がどのように定められているのか等の事情により、懲戒解雇の有効性が決まることとなりそうです。

尚、懲戒解雇が認められない場合でも通常解雇される可能性は残ります。

再雇用前の事実を理由とする懲戒解雇の問題

次に長年正社員として、期間の定めのない雇用契約に基づき勤務した後、定年後再雇用(単年度契約)されたBさんについて考えてみます。
Bさんは定年前、正社員として勤務していた時に取引先から多額のキックバックを不正に受領してそのお金をギャンブルにつぎ込んだり、取引先から回収した販売代金の一部を使い込んだりしていましたが、その事実が再雇用後に会社に発覚しました。
会社はBさんを懲戒解雇にすると言いましたが、Bさんは、定年後再雇用の社員の就業規則にも雇用契約書にも懲戒解雇の規定がないので、懲戒解雇は出来ないはずだと主張し、出勤を続けています。
Bさんの言い分は正しく会社はBさんを懲戒解雇できないのでしょうか。

Bさんの言う通り、現在のBさんの雇用形態は定年後再雇用社員なのですから、その再雇用社員向けの就業規則などに懲戒解雇の規定がない以上、会社はBさんを懲戒解雇できないのが原則です。
しかし、取引先から不正な金銭を受け取ったり、会社のお金を使い込んだりしていた事実を会社に隠していたことを経歴詐称と捉え、経歴を詐称して会社との間で再雇用契約を新たに締結したとして会社から普通解雇されたり、次年度の雇用契約の更新を拒絶されることはあり得ます。
その場合、具体的事情によっては、会社の処分は有効となり得ます。

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