化学物質を原因とする公害の訴訟上の争点の変遷について

水俣病のような化学物質による環境汚染の公害において、環境汚染状況が改善されずに公害被害者が訴訟提起に至る場合と、環境汚染状況が一定期間で改善されてから相当期間経過後に訴訟を提起する場合を比較しますと、訴訟上の主な争点は後者の方が増加する可能性が高いと考えられます。
これは、化学物質曝露により発症する公害病の場合、化学物質への高濃度・短期間の曝露により発症する急性の公害病と低濃度・長期間の曝露により生じる慢性(遅発性)の公害病では公害病罹患のプロセスが異なり、公害病に罹患していることの証明に必要な事実は異なってくると考えられるところ、慢性(遅発性)の公害病では、公害病の原因物質の最終曝露からの経過時間が急性の公害病と比較して長くなり、原因物質曝露と訴訟提起時点の公害病患者の症状との間の因果関係の証明に必要な事実が増加すると考えられるからです。
しかし、訴訟では、先行する同種の訴訟の判決の影響を受けることから、潜在的な争点の一部は顕在化せず、実際に訴訟において争点化されるのは、先行する同種の裁判において判断がなされていない事項に絞り込まれることとなります。そこで、実際には主要な争点が異なってくるとするのが正確であると考えられます。水俣病訴訟に関しては、 越智敏裕『環境訴訟法 第2版』pp.122-131(日本評論社、2020)でも同種の考察がなされております。

公害と公害病について

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公害と公害病について

環境汚染を原因として発症する病気として「公害病」がありますが、「公害」と「公害病」という用語はどのような関係にあるのでしょうか。
 平凡社の世界大百科事典では、公害病を「大気汚染,水質汚染,土壌汚染,騒音・振動など公害を原因または補助因として起きた疾病」としており、これによれば、公害病は公害に含まれないこととなります。
 一方、公害病である水俣病に関する代表的な書籍の一つである原田正純著『水俣病』(岩波書店、1972)の表紙カバーには、「水俣病 公害病の中でも大規模で最も悲惨なものの一つ」との記述があり、同著の「はじめに」の章には、「水俣病は公害の原点とも言われている」との記述あることから、同著では公害病である水俣病も公害の一部を構成するものであると考えているとも読み取れます。
 刊行されている書籍では、水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病及び四日市公害を併せて「四大公害病」と称するものが多い(政野淳子著『四大公害病』(中央公論新社、2013)等)のですが、ネット上で閲覧できる大学教員が学生向けに作成している資料の中には「四大公害」と称しているものも確認されています。
 水俣病に関しては、その公害の発生から公害病である水俣病に罹患した被害者の補償問題までを含めて「水俣病事件」と述べる文献も存在しています。
 尚、環境基本法第2条第3項では、「この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁・・・、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下・・・及び悪臭によって、人の健康又は生活環境・・・に係る被害が生ずることをいう」と定義されていることから、同法では、「公害」は大気・水質・土壌などの自然環境の汚染状態のみならずそれらにより引き起こされる人の健康被害である「公害病」の患者が発生している社会的事実までを含んでいるとも捉えられます。

2021年4月12日 | カテゴリー : 公害 | 投稿者 : 弁護士 中野正博

AI翻訳による一部記事の表示について

民事訴訟に証拠として外国語の文書を提出する場合、和文の翻訳文を添付する必要があります。
1年半ほど前、証拠として英文の公害病に関する論文を6本同時に提出するに際し、初めてAIで翻訳した和文を訳文として付けました。
その後、AI翻訳の能力も向上してきていることから、試験的にブログ記事の一部をAIにより英文に翻訳し、「Essays (AI translation)」として公開することとしました。

2021年4月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 弁護士 中野正博